甘く、溶ける、君に。



私はもうきっと一生、そんなふうに誰かを想って誰かを追っかけて_______メール一つで喜んで、会えるだけで嬉しさを隠せなくて、一緒にいられるだけで幸せ、なんて純粋な感情は一生取り戻せないんだと思う。



どうか、絵凪がこっち側にきませんようにと、そう願うくらいが私にできることだ。




こうして昇降口まで向かう間にも、


絵凪と彼氏さんのように純粋に恋を楽しんでいるカップル、

高校生らしくお喋りしながら歩く女の子たち、

いまから部活に向かうであろう坊主の野球部の子、


みんなキラキラして見えて、私とは違って見えて、ほんの少し、羨ましさを感じてしまう。



そちら側に行きたいかと言われれば、そういうわけでもない。けれど、やっぱりひとってないものねだりなんだ。



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