甘く、溶ける、君に。






ガチャっという音とともにドアを開けると、私に続いて田邊も一緒に入ってくる。



私の真後ろで「おじゃましまーす」と口にするから、田邊の目の前で「どうぞ」と特になんの感情も乗せずに言う。



しゃがんで、きちんと脱いだ靴は整える田邊。
持ってくれているスーパーの袋を置きに行ってからでもいいのに、こういう時だけ律儀なんだもん。そういうとこ、結構ずるいかも。




「ありがとう、袋持っててくれて」




スーパーからの帰り道、買い物袋をずっと持ってくれていた。何も言わずにスッと手だけ差し出されたから、私はそれに甘えることにして。



重さ自体はそんなにあるわけではないけれど、ずっと持っていてくれたのだから負担はかけてしまった。




< 8 / 349 >

この作品をシェア

pagetop