実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
26.必要
朝食が終わって数刻後のこと。
応接室のソファに腰掛け、目の前に跪く男性を見遣る。自分が『姫君だ』って初めて聞かされたのと同じ場所だ。
「姫様……! ご無事で良かった。心から安堵いたしました」
綺麗な顔をクシャクシャにし、ほぅと小さなため息を吐いたのは、今日も今日とて王子様みたいな風貌をしたバルデマーだ。
(全く、情報が早いことで)
わたしが城を去って約半日。このまま誰も連れ戻しに来ないんじゃないかって思っていたけど、さすがにそうはいかなかったらしい。小さくため息を吐いてから、わたしはバルデマーに向き合った。
「――――わたし、もうお姫様じゃないんだけど。陛下にそう聞かなかった?」
唇を尖らせて尋ねれば、バルデマーは困ったように首を傾げる。
「そんな風に仰らないでください。我が国には姫様が必要なのですから」
そう言ってバルデマーはわたしの手を恭しく握る。手袋越しに感じる体温。ついついたじろいでしまう。
(こういう触れ合いはどうしても慣れないなぁ)
救いを求めてチラリと後を振り返れば、アダルフォが微かに顔を顰めていた。
応接室のソファに腰掛け、目の前に跪く男性を見遣る。自分が『姫君だ』って初めて聞かされたのと同じ場所だ。
「姫様……! ご無事で良かった。心から安堵いたしました」
綺麗な顔をクシャクシャにし、ほぅと小さなため息を吐いたのは、今日も今日とて王子様みたいな風貌をしたバルデマーだ。
(全く、情報が早いことで)
わたしが城を去って約半日。このまま誰も連れ戻しに来ないんじゃないかって思っていたけど、さすがにそうはいかなかったらしい。小さくため息を吐いてから、わたしはバルデマーに向き合った。
「――――わたし、もうお姫様じゃないんだけど。陛下にそう聞かなかった?」
唇を尖らせて尋ねれば、バルデマーは困ったように首を傾げる。
「そんな風に仰らないでください。我が国には姫様が必要なのですから」
そう言ってバルデマーはわたしの手を恭しく握る。手袋越しに感じる体温。ついついたじろいでしまう。
(こういう触れ合いはどうしても慣れないなぁ)
救いを求めてチラリと後を振り返れば、アダルフォが微かに顔を顰めていた。