実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
(まあ、当然っちゃ当然よね)


 せっかく時間もお金もふんだんに掛けて、次期後継者を育成していたんだもの。簡単に逃すわけにはいかないのだろう。正直、わたしが彼等でもそうするもの。応えてあげられないのは大変申し訳ないけど、元々わたしが望んだことじゃないんだし、大目に見て欲しいなんて思う。

 そんな中、『戻って来い』と言わないのは、ランハートとシルビア、それからエリーぐらいのものだ。

 だけど、シルビアは『戻れ』と言わない代わりに、今でもわたしをお姫様扱いする。

『姫様は姫様ですもの』

 そう言って微笑む彼女は、しなやかなようでいて、とても頑なだ。


「姫様、お茶のお替りを持って参りましたわ。それから、刺繍の図案と、最近王都で流行っている本、最後にバルデマー様からの贈り物とお手紙です」


 シルビアはエリーに目配せをし、持参したバスケットの中身を広げる。のんびりさせたいのか、忙しくさせたいのか、よく分からないラインナップだ。


(本当はもう、お腹がタプタプなんだけど)


 折角持ってきてくれたものを無駄にはできない。アダルフォも巻き込んで、皆でお茶をいただくことにした。

 シルビア達が持ってきてくれたのは、バラの花びらで香りづけをした、大層オシャレな紅茶だ。舌やお腹を満足させるというより、香りを楽しむために作られた贅沢品で、自分じゃ絶対選ばない代物。シルビアの女子力の高さをひしひしと感じる。


「……ねえ、もしもシルビアは『明日から聖女の仕事をしなくて良い』って言われたら、どうする?」


 性格や価値観は違えども、シルビアとは境遇が似ている。もしもシルビアがわたしのように自由を手にしたらどうするか、ふと気になったのだ。


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