実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「まあ……! そんなこと、考えたこともございませんでしたわ」


 問い掛けに目を丸くすると、シルビアはそっと首を傾げる。


「そうですわねぇ……優しい誰かと結婚して、子どもを産んで、こんな風にゆっくりとお茶を飲んで過ごしたいと思いますわ。緑豊かな領地だったら最高ですわね」


 ニコリと微笑みながら、シルビアはどこか遠い目をする。


「ですが、楽しいのは最初の内だけだと思いますわ。こうして聖女として働くことは、謂わばわたくしそのもの。いつの間にかお祈りを始めて、色んな街を巡って、聖女として動いていると思いますの。
例えば、ある日突然聖女としての力が無くなったとしても、わたくしはわたくしに出来ることを続けるのだと思います」

「…………そっか。そうなんだね」


 胸のあたりがチクチクと疼く。それが何なのか分からないまま、わたしは小さく息を吐いた。


「シルビアはすごいね」


 元々自分で選んだ道じゃなかったのに、それでも真っ直ぐ進み続けている。途中でコースアウトしちゃったわたしとは大違い。シルビアだって、嫌なこととか苦しいこととか、たくさんたくさんあっただろうに、そういうことをちっとも感じさせない。


「いいえ、姫様。わたくしがこんな風に思えるようになったのは、姫様のお陰ですわ」

「……え? わたし?」


 問えば、シルビアは力強く頷く。


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