実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「本気で騎士になりたいのか?」


 エメットはゴクリと唾を呑み、表情に躊躇いを滲ませる。


「本気かって聞かれると、自信は無くて……。もしかしたら、全然覚悟が足りてないのかもしれません。だけど俺、これからもアダルフォさんに稽古をつけてほしくて」

(正直者だなぁ)


 騎士ってのは命がけの仕事だ。簡単に足を踏み入れて良い世界じゃない。そうと分かっていながら、尋ねずには居られなかったのだろう。エメットの気持ちを想うと、何だかとっても微笑ましい。
 アダルフォは穏やかに笑むと、エメットの肩をポンと叩いた。


「覚悟が出来たら城に来ると良い」


 その瞬間、エメットの瞳がキラキラと輝く。わたしまで何だか嬉しくなってしまった。
 エメットが城の門を叩くのは、そう遠くない未来だろう。


(何だか楽しみが増えちゃったな)


 お母さんたちと目配せをし、満面の笑みを浮かべる。
 それから馬車に乗り込むと、窓から身を乗り出して息を吐いた。


「行ってきます!」


 そう言って大きく手を振る。


「――――行ってらっしゃい!」


 馬車がゆっくりと動き出す。ジワリと涙が滲み出た。
 お父さんとお母さん、それから大好きな我が家が、少しずつ小さくなっていく。
 だけど、二人から無理やり引き離された時とは全然違う――――希望に胸が満ちていた。
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