実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「姫様! アダルフォも」


 その時、わたし達に気づいた騎士のおじさんことランスロットが出迎えてくれた。
 彼は普段、おじいちゃんの警護についているけど、わたしが来るということで、こうして騎士団に来てくれたのだ。


「ランスロット、わたしの幼馴染をよろしくお願いします」

「もちろん! しっかり鍛えて差し上げましょう」


 おじいちゃんと一緒に居る時のランスロットは、どこか澄ました嫌なおじさんだけど、今の彼は何処かカラッとしていて好感が持てる。元は脳筋というか、普通に良い人なのだろう。


「よっ……よろしくお願いいたします!」


 エメットは相当緊張しているらしい。顔を真っ赤に染めつつ、深々と頭を下げている。
 弟の門出を見守るみたいな気分で、何だかとても誇らしい。エメットはそのまま、出迎えの騎士達に詰め所へと連れて行かれた。


「ねえ、しばらく訓練を見学しても良い?」

「どうぞどうぞ。姫様がご覧になることで、あいつらの士気も上がるでしょう」


 ランスロットの言う通り、先程からチラチラと騎士達の視線を感じる。彼等の中に王配の地位を狙っている人は居ないと思うけど、士気が上がるって言うのは本当みたい。まあ、美人のエリーを連れてきたから、そっちが目当てかもしれないけど。


「ねえ、アダルフォ」

「何でしょう?」

「わたし、アダルフォが訓練している所が見て見たい」


 ふと思い付きを口にしてみれば、彼はほんのりと目を丸くする。


「訓練? 先日、エメットに稽古を付けている所をご覧になったでしょう?」

「そうだけど、エメットじゃ全く相手にならないじゃない。互角な人と戦っている所を見て見たいなぁと思って」


 護衛騎士の出番が無いのは平和な証拠。だけど、折角の機会だもの。良いところを見たいと思うじゃない?


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