実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 え。
 ええ?
 えええ!?


 正直、こんな反応を返されるなんて、想像していなかった。
 てっきり『はい、もちろん』なんてサラリと返されて。
 『だったら、王配になることも視野に入れておいてね』とか『アダルフォもプロポーズしてみてよ』なんてことを、軽いノリを装って返すつもりでいたのに。


(嘘でしょう?)


 アダルフォがわたしを? ……本当に?
 心臓がドッドッと勢いよく鳴り響く。あまりの事態に、普段空気を読めないエメットさえ、顔を真っ赤にして口を噤んでいる。


「――――当然、心からお慕い申し上げています」


 アダルフォは観念したように、恭しく膝を突き、わたしの手をそっと握った。
 潤んだ瞳がわたしだけを映し出す。手のひらが熱い。今にも抱き締められそうな、そんな心地がした。

 これはやばい。想定外の事態だ。
 こういう時、何て言えばいいの? どうしたら良いの? っていうかアダルフォの言う『慕っている』って、わたしの認識と合ってる? だけど、『騎士として慕っている』なら、こんな空気にはならないよね?


「――――ありがとう」


 伝えるべきことは他にもたくさんあった筈なのに。
 結局わたしは、そんなことしか口にできなかった。
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