実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「何かお悩み事でもあるのですか? 私でよかったら相談に乗りますよ」


 バルデマーはずいと身を乗り出し、心配そうに目を細める。

 近い。
 この間からやたら距離が近い。鼻先が触れ合いそうなレベルだ。
 ついでに言うと、手がしっかりと握られているし、腰なんかも抱かれていて、何だかとても落ち着かない。

 しかも、この様子をアダルフォが見ていると思うと、更にソワソワと落ち着かなかった。


「えっと……王太女としてのお披露目が近付いているでしょう? やっぱり不安だなぁと思って。陛下やゼルリダ様から公務も引き継ぐしね」


 少しだけ悩みの方向性が違うけど、事実だから突っ込みづらいだろう。


「ああ、そうですよね。肝心の婚約者もまだ決まっていませんし」

「!」


 え、嘘。
 目の前に居るの、ランハートじゃないよね? バルデマーだよね?

 正直言ってびっくりした。いつも核心に触れないあのバルデマーが! 思いがけずそんなことを言うんだもの。わたしはゴクリと息を呑んだ。


「誰を選ぶか、迷っていらっしゃるのですか?」

「……そりゃあそうよ。皆それぞれに良いところがあるんだし」


 当事者であるバルデマーから、正面切って尋ねられると、どう答えて良いか分からなくなる。変に期待させたらいけないし、かといって何も答えないわけにもいかないんだもの。


「良いところ? 本当にそう思っていらっしゃるのですか?
姫様もご存じとは思いますが、ランハートは相当な遊び人ですよ? 結婚したところであなたを大切にはしない。泣かせるだけです。そんな不誠実な人間、あなたの夫に相応しく無いでしょう。何故迷われるのですか?」

「……どうしてそんなことを言うの?」


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