実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜

40.勘違いしないで頂戴

【昨日は申し訳ございません。お披露目迄の期日が迫っていることで、焦ってしまいました】


 先程読んだばかりのバルデマーからの手紙を思い出しながら、ふぅと小さくため息を吐く。
 予期せぬ形で候補者の一人からプロポーズを受けるのに成功したものの、正直気分が塞いでいる。『選んで欲しい』とハッキリ言葉にされるのって、想像していた以上にプレッシャーだ。
 昨日からずっと、バルデマーの真剣な表情がチラついて、色んなことに集中できない。


「姫様、もう少し腕を上げていただけますか?」

「……こう?」


 わたしを取り囲む幾人もの女性。身体がコルセットでキツく締め上げられる。

 今日は目前に迫っているお披露目式の衣装合わせ。
 ドレスやティアラ、宝飾品なんかを実際に身に着け、微調整を行うのだ。


(お披露目式って言うから、夜会の時みたいな派手なドレスなのかと思っていたけど)


 当日わたしが着る予定のドレスのは、オフホワイトのシルク地に金の刺繡が施された、とてもクラシカルなドレスだ。ネックラインが大きくカットされていて、肌が大きく出るのだけど、不思議なほどに上品だ。滑らかな光沢のある生地はいつまでも眺めていられるし、繊細で華やかなレースが目を惹く。


「惚れ惚れする位綺麗なドレスよね」


 ここに来て、色んなドレスを見てきたけど、これは別格。単なる『お姫様』ではなく、『国の後継者――王太女』なんだって一目で分かるような威厳に満ちたドレスだ。誰が選んでくれたのか知らないけど、とてもセンスが良い。


「こちらのドレスは、ゼルリダ様がお選びになったのですよ」

「そうなの?」


 まさかの人物の登場に、わたしは思わず目を見開く。


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