実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「――――姫様、私は姫様と二人きりで過ごしたいのです。ランハート様も、アダルフォも抜きに、二人きりで」


 どうやら返す言葉が見つからなかったらしい。彼はそう言って、わたしの側に跪いた。


「二人きりって言っても……ねぇ」


 わたしはアダルフォと顔を見合わせつつ、小さく首を傾げる。
 そりゃあ、これまでだってバルデマーと二人きりになったことはあったけど、こんな風に感情的な時じゃなかったし。身の危険を感じているわけじゃないけど、色々と墓穴を掘っちゃいそうだから、出来れば避けて通りたい。


「余裕のない男は嫌われますよ? 焦る気持ちは分からないでもありませんが」

「そう思うなら、今すぐここから出ていってください。貴方は僕と違って余裕があるのでしょう? だったら、姫様と過ごす必要は無い筈です」

「まあ、そうですね……僕はただ、ライラ様に会いたかっただけですから」


 ランハートはそう言うと、わたしの手を取り、指先にそっと口付ける。トクンと胸が高鳴り、頬に熱が集まる。
 こういうことをさらりと言えちゃうあたり、ランハートはズルい。だけど、分かっていてもドキドキはしてしまうもので。


「仕方が無いからまた来ますよ。その方がゆっくり過ごせるでしょう?」

「……うん、分かった」


 熱っぽい瞳でそんなことを尋ねられちゃ堪らない。よく考えたら、想いを自覚してからランハートに会うのはこれが初めてだし。
 素直に頷くわたしを前に、バルデマーは大きく目を見開いた。


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