実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜

46.王様は――

 バルデマーとはその後もこれまで通りの交流を続けた。
 彼は花束や宝石、ドレスを手土産にわたしに会いに来てくれる。当然それは王配になりたいと思っているからで、罪悪感が無いと言ったら嘘になる。
 とはいえ、わたしが誰を選んだのか、全く匂わせていない訳ではないし、折角持ってきてもらったものを突き返すことも出来ないのだけど。


「税率を上げる?」

「ええ。そうすれば国庫が潤い、色んな政策に取り組みやすくなります。現に、予算不足にあえぐ部署は少なくありません。私が貴方の夫になれたら、すぐに取り組みたいことなのです」

(税、ねぇ……)


 自分の身の上を知らなかった頃、税金とか政策とか、そういうのは遠い雲の上のお話だった。そんな雲の上で決まった話がいつの間にか地上に降りてきて、雨風みたいに生活に影響する。

 それが政治。
 それが王政だってことは分かっているけど、果たしてそれで良いのだろうか?

 身近なところで、少なくともエメットは『良くない』と思っていた。貴族ばかりが良い思いをしているっていつも言っていたし、事実がどうあれそう見えていたことには変わりない。
 バルデマーはそういう民が居るってことを知っているんだろうか?


「だけどバルデマー、本当にお金は足りていないの? わざわざ税率を上げなきゃいけない程、足りていないのかしら?」


 王女のわたしは現場を知らない。文官であるバルデマーの方が、城で働く人達の現状を知っているのは間違いない。そう思って尋ねた質問だったのだけど。


「足りているか、いないかではないのです。お金さえあれば、今着手できていない新たなことに挑戦出来るのです。有益でしょう?」

「それはそうかもしれない。だけど、政策に取り組む以前に民の生活に影響が出てしまうわ。
例えばだけど、貴方が持ってきてくれたその花束。それ一つで家族三人の一週間分の食事が買えてしまうの。知っていた?」

「いえ、それは……」

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