実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
48.ゼルリダ様のお茶会(前編)
視線が痛い。風も吹いていないのに、空気がとてつもなく冷たい。
(そんなに怒らなくたって良いじゃない)
必死に気づかない振りをしながら、隣に並んで城内を歩く。
どちらかと言えば、可哀そうなのはわたしよりもエリーや侍女達だ。絶妙な空気感の中、わたし達を見守ることしかできないんだもん。胃が痛くなってしまいそう。
「――――あなたには他にすべきことが有るでしょう?」
会場が近づいて来たその時、いよいよ我慢が出来なくなったらしい。ゼルリダ様が地の底を這うような声音でそう口にする。
「いいえ。すべきことはきちんと熟してから来ていますし、これだってわたしのすべきことですから」
大丈夫。昔ほど怖いとは思わない。
しっかりと自分の気持ちを主張すれば、ゼルリダ様は小さく息を吐いた。
「後継者教育は?」
「即位までのカリキュラムは終わりました。学び足りない部分については、資料を大量に貰っていますのでご心配なく。ちゃんと時間を見つけて読んでいます」
「式典の打ち合わせは?」
「順調です。文官の皆が頑張ってくれています」
「シナリオは? きちんと頭に入っているの?」
「はい。問題ございません」
「スピーチは?」
「…………大丈夫です」
ほんの少しだけ生じてしまった間を、ゼルリダ様は聞き逃してくれなかった。眉間に小さく皺を寄せ、わたしのことを睨みつける。
(そんなに怒らなくたって良いじゃない)
必死に気づかない振りをしながら、隣に並んで城内を歩く。
どちらかと言えば、可哀そうなのはわたしよりもエリーや侍女達だ。絶妙な空気感の中、わたし達を見守ることしかできないんだもん。胃が痛くなってしまいそう。
「――――あなたには他にすべきことが有るでしょう?」
会場が近づいて来たその時、いよいよ我慢が出来なくなったらしい。ゼルリダ様が地の底を這うような声音でそう口にする。
「いいえ。すべきことはきちんと熟してから来ていますし、これだってわたしのすべきことですから」
大丈夫。昔ほど怖いとは思わない。
しっかりと自分の気持ちを主張すれば、ゼルリダ様は小さく息を吐いた。
「後継者教育は?」
「即位までのカリキュラムは終わりました。学び足りない部分については、資料を大量に貰っていますのでご心配なく。ちゃんと時間を見つけて読んでいます」
「式典の打ち合わせは?」
「順調です。文官の皆が頑張ってくれています」
「シナリオは? きちんと頭に入っているの?」
「はい。問題ございません」
「スピーチは?」
「…………大丈夫です」
ほんの少しだけ生じてしまった間を、ゼルリダ様は聞き逃してくれなかった。眉間に小さく皺を寄せ、わたしのことを睨みつける。