実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「未だ若い姫様には分かられないかもしれませんが、より良い領地を求めるのは女として当然のこと。そして、自分に任された役目を果たせぬのなら、身を引くのも当然ですわ」


 呆れた。折角良い気持ちのまま会話を終わらせてあげようと思ったのに。わたしのことまで馬鹿にするし、自分で自分の首を――――夫の首をも絞めているのが分からないのかしら。


「まぁ……! 役目とは一体何のことですの? どうして身を引かねばなりませんの?」


 無垢な振りをしながら、少々大袈裟に首を傾げる。
 こういう嫌味は、本人に説明を促すに限る。それだけで多少は頭が冷えるだろうし、浅はかな自分を思い知ってもらえるもの。


「それは……その…………」

「教えてください。与えられた場所、環境で全力を尽くして何が悪いのです? 当事者がそれを認めていて、尚且つ望んでいるのでしょう? そもそも、その場所だって己の力で勝ち取った物――――或いは敗れ、得ることの出来なかった物ではありませんか」

「姫様の仰る通りですわ!」


 その瞬間、他の参加者たちが身を乗り出す。心からわたしに賛同している人も居れば、未来の王太女であるわたしに取り入りたい人まで様々だけど、理由なんて今はどうでも良かった。表面上でも賛同を得ることの方が大事だからだ。


「けれど姫様! その……もしも妃殿下が身を引いていれば、姫様はこうして城に連れてこられることもございませんでしたのよ? 姫様はここでの生活を嫌っていらっしゃるようですし」

「あら、そんな話、一体誰に聞いたの?」


 言いながら、わたしは今日一番のとびきりの笑みを浮かべる。無邪気なようで、含みのある――――そんな表情に見えるよう、細心の注意を払いながら。

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