実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
51.クラウスの願い【Side ゼルリダ】
招待客たちが居なくなり、ライラと二人きりになった庭園はやけに静かだった。
何も指示をしていないのに、侍女達が新しいお茶を運んでくる。二人で隣り合って座り、しばらくの間どちらも口を開かない。
「――――やっぱり血は争えないわね」
先に沈黙を破ったのは私の方だった。
ライラは小さく目を見開き、それから困ったように首を傾げる。
「それってわたしがおじいちゃんに似ているってことですか? それともお父さん?」
「両方よ。嫌になる程似ているわ」
答えつつ思わず苦笑を漏らせば、ライラは静かに目を伏せた。
物心がついてから一度も会ったことが無いなんて嘘のよう。ライラは夫に――――クラウスにそっくりだった。
一見おっとりとしているように見えるのに、本当は物凄い頑固者。己がこうすると決めたら、敵を作ってでも絶対に考えを曲げはしない。
『僕の妃はゼルリダだけだよ』
クラウスの声が頭の中で木霊する。
死の間際、彼の枕辺で謝罪する私に掛けてくれた言葉だ。
私は彼の子供を産めなかった。原因は明らかに私にあるというのに、夫は私以外の側妃を娶ることも、離縁もしない。
申し訳なかった。妃としての務めを果たせないことが。
愛情深い彼に、惜しみなく愛を注ぐことの出来る存在を与えられないことが。
彼の願いを何一つ叶えてあげられない出来損ないの妃なのに、私は妃の座を――――彼を手放すことが出来なかった。
何も指示をしていないのに、侍女達が新しいお茶を運んでくる。二人で隣り合って座り、しばらくの間どちらも口を開かない。
「――――やっぱり血は争えないわね」
先に沈黙を破ったのは私の方だった。
ライラは小さく目を見開き、それから困ったように首を傾げる。
「それってわたしがおじいちゃんに似ているってことですか? それともお父さん?」
「両方よ。嫌になる程似ているわ」
答えつつ思わず苦笑を漏らせば、ライラは静かに目を伏せた。
物心がついてから一度も会ったことが無いなんて嘘のよう。ライラは夫に――――クラウスにそっくりだった。
一見おっとりとしているように見えるのに、本当は物凄い頑固者。己がこうすると決めたら、敵を作ってでも絶対に考えを曲げはしない。
『僕の妃はゼルリダだけだよ』
クラウスの声が頭の中で木霊する。
死の間際、彼の枕辺で謝罪する私に掛けてくれた言葉だ。
私は彼の子供を産めなかった。原因は明らかに私にあるというのに、夫は私以外の側妃を娶ることも、離縁もしない。
申し訳なかった。妃としての務めを果たせないことが。
愛情深い彼に、惜しみなく愛を注ぐことの出来る存在を与えられないことが。
彼の願いを何一つ叶えてあげられない出来損ないの妃なのに、私は妃の座を――――彼を手放すことが出来なかった。