実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
54.どうか、誰も聞かないで――――
(どうしよう)
考えながら、足がすくむ。心臓が変な音を立てて鳴り、頭がちっとも動かない。
と、アダルフォが勢いよく駆け出した。すれ違いざま、鋭い眼光が目に入る。
「アダルフォ、待って!」
ランハートには聞こえない程度に声を絞り、わたしはアダルフォを呼び止める。
「止めないでください、ライラ様」
アダルフォの表情は真剣だった。彼はランハートを問い詰める――――というか、襲撃する気満々なんだろう。
ダメ。
王太女への即位は目前だもの。それなのに、城内で刃傷沙汰を起こすなんて。
そんなの、絶対ダメだ。
「落ち着いて。わたしなら大丈夫だから」
言いながら、段々と冷静になっていく。大きく息を吸いながら、わたしはアダルフォの肩に手を置いた。
「しかし、ライラ様」
「逢引だと決まったわけじゃないでしょう?
第一、彼を選んだのはわたしだもの。彼がこういう人だってわかっていたんだもの。問い質すのも、文句を言うのもおかしいでしょう?」
それは、アダルフォというより、自分に対して伝えたい言葉だった。
元々、ランハートの女癖が悪いってことは知っていた。シルビアやヴァルデマーから、何度も忠告を受けてきた。
だけど、それに耳を傾けなかったのはわたしだもの。
ランハートを責めることはできない。
絶対、できっこない。
「しかし」
「命令よ。本件の追及は許さないわ」
きっぱりとそう口にすれば、アダルフォは静かに頭を垂れる。
考えながら、足がすくむ。心臓が変な音を立てて鳴り、頭がちっとも動かない。
と、アダルフォが勢いよく駆け出した。すれ違いざま、鋭い眼光が目に入る。
「アダルフォ、待って!」
ランハートには聞こえない程度に声を絞り、わたしはアダルフォを呼び止める。
「止めないでください、ライラ様」
アダルフォの表情は真剣だった。彼はランハートを問い詰める――――というか、襲撃する気満々なんだろう。
ダメ。
王太女への即位は目前だもの。それなのに、城内で刃傷沙汰を起こすなんて。
そんなの、絶対ダメだ。
「落ち着いて。わたしなら大丈夫だから」
言いながら、段々と冷静になっていく。大きく息を吸いながら、わたしはアダルフォの肩に手を置いた。
「しかし、ライラ様」
「逢引だと決まったわけじゃないでしょう?
第一、彼を選んだのはわたしだもの。彼がこういう人だってわかっていたんだもの。問い質すのも、文句を言うのもおかしいでしょう?」
それは、アダルフォというより、自分に対して伝えたい言葉だった。
元々、ランハートの女癖が悪いってことは知っていた。シルビアやヴァルデマーから、何度も忠告を受けてきた。
だけど、それに耳を傾けなかったのはわたしだもの。
ランハートを責めることはできない。
絶対、できっこない。
「しかし」
「命令よ。本件の追及は許さないわ」
きっぱりとそう口にすれば、アダルフォは静かに頭を垂れる。