実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「僕はライラ様を心から愛しています。王としての貴女も、普通の女の子としての貴女も、隣で支え、幸せにします。どうか、貴女と一生を共に歩ませてください」


 いつになく真剣なランハートの表情。
 心が大きく打ち震える。


(もう、諦めていたのに)


 プロポーズなんてしてもらえない。ランハートから愛してもらえることはないって、そう思っていた。


(だけど)


 ランハートはわたしに求婚してくれた。愛していると言ってくれた。
 嬉しくないはずがない。

 だからこそ、わたしにだって伝えなきゃいけないことがある。


「わたし……わたしは、平民王女だから! 普通の貴族みたいには考えられないから!
夫が――――ランハートが自分以外の女性と逢うのは嫌。わたしだけを愛してって言っちゃうよ。それでも良いの?」


 それは、自分なりに考えて出した結論。
 わたしはランハートを夫にする。彼はわたしが王族として歩んでいくのに、必要な人だ。前に立つでもなく、背後から護るでもなく、隣を歩こうとしてくれる人だから。

 だけどそれでも、わたしは自分の気持ちだって大事にしたい。
 愛されたいって。わたしだけを大切にしてほしいって。

 自分の考えを伝えることすらしないのは間違っているって思ったから。


「そんなこと、当然ですよ」


 ランハートは呆れたように、困ったように笑いながら、わたしのことを抱きしめる。普段の気取った表情とは違う、砕けた笑み。わしゃわしゃと頭を撫でられ、息をするのも忘れて目を瞠る。


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