実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 ふぅ、とため息を吐きながらわたしは筆ペンを置く。胸のあたりがモヤモヤして、眉間のあたりが熱かった。


(もっとたくさん、伝えたいことがあった筈なのに)


 いざ机に向かうと、思うように筆が進まなかった。それは多分、手紙じゃなくて直接伝えたいから――――何だか勿体なく感じてしまったのが原因だと思う。


「アダルフォ――――これ、父と母に送ってもらえる? ランドールがわたしの家を知っているから」


 そう言ってわたしは、書き上がった手紙をアダルフォに託した。アダルフォはまじまじとわたしを見つめつつ、コクリと小さく頷いてみせる。


「折角の休憩時間に何をしていらっしゃるかと思えば、ご両親に手紙を書いていらっしゃったのですね」


 それは半ば呆れたような、感心したような声音だった。わたしはふふ、と笑いつつグッと大きく伸びをする。


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