実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「折角の休憩時間だからこそ、よ。夜はクタクタで、筆を取る時間なんてないもの。手紙を書くだけの環境も整っているのだし、時間は大切に使わないと」


 慣れない環境のせいか、はたまた詰め込み型のスパルタ教育のせいか、ここ最近のわたしの疲れ具合は凄まじかった。夜ともなれば眠くて眠くて堪らなくて、入浴が終わると同時にベッドで寝入ってしまうし、身体中が凝り固まって痛い。今は午前中で比較的疲れが少ない時間帯だから、これでもまだマシな方だ。


(本当は復習もしなきゃなんだけどね)


 既に十六歳のわたしに対して『基礎からゆっくり教える』なんて生易しい教育は許されていない。とにかく知識を詰め込む方式だから、自分で基礎を学んで、その上で与えられた知識を覚えて行かなければならない。非効率的だと訴えたいけど、広大な城の中、肝心の『訴えるべき相手』は、本当に影も形も見えなかった。

 外から見えるよりずっとずっと、城っていうものは大きい。
 わたしに与えられたのは北側に位置する宮殿の一室だった。本来なら、次期王位継承者には東側の宮殿が宛がわれるものらしいけど、そこには未だ王太子妃様――――ゼルリダ様が住んでいらっしゃる。気難しいお方だから、わたしと一緒に暮らすのは無理だと判断されたらしい――――そう、侍女達の噂話で知った。


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