実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「相変わらずシルビアちゃんは変なことを考えるねぇ。
――――確かに妃殿下を通じて、僕のところにも次期王太子の打診は来たよ? だけど、陛下は姫様を王太女にするって決めていらっしゃったし、面倒ごとは嫌いだ。陛下と妃殿下の間に挟まれるなんてごめんだからね。僕自身が王太子になろうなんて大それたことは考えないよ」


 優雅にティーカップを傾けながら、ランハートはそう口にする。


(僕自身が、ね……)


 何となく含みのある物言いに、わたしはランハートのことをそっと見つめる。視線に気づいたのか、ランハートは屈託のない笑みを浮かべると、わたしの手をギュッと握った。


「だって、自分で王太子になるより、王太女の配偶者になった方がずっと楽に生きられる。この考え方、姫様なら分かってくれるでしょう?」


 明け透けな物言い。わたしはゴクリと息を呑んだ。


「姫様……! こんな男の言うことを聞く必要はございませんわ! 今すぐここから追い出しましょう」

「えっ、どうして? 野心を隠して姫様に近づくバルデマーより、僕の方がずっとマシだと思うんだけどなぁ。
姫様だってもう分かっていらっしゃるでしょう? 今、あなたに近づく男性は十中八九あなたの配偶者の地位を狙っている。『姫様を想って』みたいな綺麗ごとを聞かされて、嬉しいって思います?」

「それは…………」


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