実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 正直言って、今のわたしとシルビアじゃ勝負にならない。天と地程の差がある上、勝てない戦に挑むようなタイプじゃないと自認しているし、今まで誰からもそんな風に言われたことが無いのだけど。


「シルビア様に対してってことじゃありません。姫様はご自分に負けるのが嫌いなのでしょう?」


 アダルフォの言葉に、わたしははたと目を見開いた。


(そんなこと……考えたことも無かったわ)


 とはいえ、思い当たる節が無いわけじゃない。アダルフォとシルビアはそんなわたしを尻目に、顔を見合わせて微笑んだ。


「姫様はきっと、刺繍が得意になりますわ。苦手と仰いつつ、こんな風に努力を続けられるのですもの。わたくし、少しでも姫様の力になれるなら、本当に幸せですわ」


 そう言ってシルビアは瞳を輝かせる。途端に物凄く恥ずかしくなって、わたしはふいと顔を背けた。


(シルビアの評価は間違ってる)


 刺繍のことだけじゃない――――わたしは本当はいつだって、嫌なことからは背を向けて逃げ出したいって思っている。
 王位を継ぐことだってそう。昨日は『頑張ろう』って思っても、翌日には気合が萎れることもしばしばだし、何でわたしが? って日々自問しているんだもの。


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