実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
(それにしたって、ランスロット様は酷いわ)


 エリーはランスロットに手紙を託す度『返事を受け取って来て欲しい』と伝えている。ライラから直接頼まれたわけではないし、越権行為だと分かってはいたが、家族のことを話すときのライラの切なげな表情を思えば、多少のお咎めは気にならない。
 しかし、肝心のランスロットからは、分かった分かった、と毎度適当にあしらわれてしまう。そのことがエリーはとても腹立たしかった。


(本当は、アダルフォ様が使者を務めた方がずっと良いと思うのだけど)


 ライラの育ての親のことは、ランスロットに一任されているからとの理由で、変更は認められなかった。これらの事情は、現状ライラには伏せられている。


(もしも許されるなら、わたくしが直接姫様のご実家を訪問したいのだけど――――)


 けれどその時、エリーはハッとして足を止めた。彼女の進む先に佇む一人の女性の存在に気づいたからだ。
 女性はまるで精巧な人形のように美しく、凛とした空気と煌びやかな衣装を身に纏っている。彼女の後ろには、数人の侍女が付き従い、全員が真っ直ぐにエリーのことを見つめていた。ビリビリと背筋が震えるような緊張感がエリーを襲い、彼女はゴクリと唾を呑む。


 ライラの義母――――王太子妃ゼルリダだった。


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