実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 エリーは急いで道の端に移動し、ゆっくりと恭しく首を垂れる。心臓がドッドッと変な音を立てて鳴り響き、全身から嫌な汗が滲んだ。


(早く……早く通り過ぎますように)


 ゼルリダは気難しく、厳格なことで有名だ。大層な美人だがピクリとも笑わず、いつも冷たい瞳をしている。同じ空間に居るだけで相当なプレッシャーを伴うため、侍女達も数か月おきに全て入れ替わっているらしい。


「――――――あなた、ライラの侍女でしょう?」


 けれど、エリーの願いは届かなかった。彼女の頭上で冷ややかな声音が響き、エリーは唇を震わせる。


「質問にはきちんと答えなさい。あなたは一体何を運んでいるの?」


 エリーがおずおずと顔を上げると、ゼルリダは次いで質問を投げ掛ける。


「――――妃殿下のおっしゃる通り、わたくしは姫様の侍女にございます。そしてこちらは、姫様からお預かりしている、とある方への贈り物です」


 侍女の対応は良くも悪くも、主人であるライラの評価につながる。ガクガクと震えそうになる身体を奮い立たせ、エリーは毅然とゼルリダに立ち向かった。


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