実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「そう。ならばそれ、そのまま私に渡しなさい」

「え……?」


 想定外の返答に、エリーは思わず目を見開く。呆然とゼルリダを見上げながら、ライラから預かった手紙とハンカチの入った小包をギュッと胸に抱き締めた。


「――――あなた、私の言うことが聞けないの?」

「おっ……恐れながら、わたくしの主人はライラ様でございます。いくら妃殿下が相手とは言え、姫様から預かった荷物をお渡しすることは……」

「そんな事情、私には関係ないわ」


 そう言ってゼルリダは、エリーの手から荷物をスッと抜き取る。一瞬だけ触れた彼女の手は、まるで氷のように冷たく、エリーはビクリと身体を震わせた。


「これは私が預かります」

「しかし、妃殿下!」

「あの子には『ランスロットに託した』と、そう伝えなさい」


 取り付く島もない冷たい声音。ゼルリダは踵を返し、侍女達を伴って去っていく。


(どうしよう……姫様が心を込めて作った物なのに…………)


 エリーは瞳に涙を滲ませ、愕然とその場に膝を付いた。
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