実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 刺繍のときもそうだったけど、ランハートにはわたしがどうやったら自分の思い通りに動くのか把握しているらしい。

 城に軟禁状態になっているわたしにとって、外に出られるという、ただそれだけのことがどれ程嬉しいか――――そのことを彼はきちんと分かっているのだ。
 そのために必要な大義名分や根回しを的確に把握して動ける辺り、彼の自己評価は間違っていないと思う。

 それに、夜会の開催とか采配みたいなことは、バルデマーにとっては苦手分野だろう。交友関係が広く、華やかなことが大好きなランハートだからこそできることだ。だから、自分の得意なことで攻めるやり方は決して間違っているとは思わないし、嫌いじゃない。


「と、いうわけでこちらが招待状です」

「ありがとう。……って、一ヶ月後? ちょっと準備期間が短いんじゃない?」


 頭の中でこれからするべきことを思い浮かべつつ、わたしはランハートに問い掛ける。

 わたしのワードローブはおじいちゃんのお蔭で充実してはいるけど、夜会に赴くとなると別途ドレスを新調しなきゃいけないんじゃなかろうか。
 それに、ダンスや礼儀作法、社交術なんかもまだまだ習得途中だ。あと一ヶ月で自信を持って披露できるかと問われたら「否」と答えてしまいそうになる。

< 88 / 257 >

この作品をシェア

pagetop