実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「ランハート――――あなた自分で『わたしに近づく男性は十中八九配偶者の地位狙い』だって言ってたでしょう?」

「ええ、その通りです。
ですが、ここに居るのは姫様の配偶者になりたいというより『僕が王配になった時に甘い汁を吸いたい』って連中ばかりですよ。僕と競おうなんて人間はいません」


 そう言ってランハートは恭しく手を差し出す。


「一曲踊っていただけますか? 今日のために練習していらっしゃったのでしょう?」

「――――――良いわよ」


 ランハートの手を取り、わたしは小さくため息を吐く。それを合図に、それまで流れていた曲が終わり、楽団が新たなメロディーを奏で始めた。
 音楽に合わせてステップを踏み、ランハートと身体を寄せ合う。一体何が楽しいのか、目を細めて笑うランハートに、胸がザワザワと騒いだ。


「ねぇ、一番最初に踊る相手がわたしで女の子たちが怒らない?」


 何か喋っていないと落ち着かなくて、わたしは無理やりそんな話題を切り出した。
 ランハートは大層な女たらしだってシルビアが言っていたから、ここにいる令嬢たちは皆、彼のお手付きだったり恋人だったり、恋人予備軍なのかなぁなんて思っていたのだ。


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