実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「何を仰っているんですか。僕は姫様としか踊りませんよ」


 ランハートはそう言って額を寄せ合う。まるで恋人同士が睦み合うみたいな仕草に、心臓が大きく跳ねた。


「ついでに言えば、姫様を他の男と踊らせるつもりもありません。この場にバルデマーが来ていたとしても、全力で阻止していましたよ」


 まるで内緒話をするかのように、ランハートは耳元で囁く。背筋がぶわっと粟立って、わたしはゴクリと息を呑んだ。


「――――――ランハートの場合、発言の裏に魂胆があるって分かっているから助かるわ」


 ランハートのリードに合わせながら、わたしはステップを踏み続ける。初めて人前で踊ったせいか、緊張で少しだけ息が上がっていた。


「そうですか? 僕は寧ろ、裏も表も全部お見せしていますからね。姫様に何一つ、嘘は言っていませんよ」


 そう言ってランハートはゆっくりと目を細める。夜会の雰囲気のせいなのか、その笑顔はあまりにも色っぽくて、悪魔的だった。
 身体中の血がザワッて騒ぐ心地に、わたしは思わず目を逸らした。
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