英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
「え。あの、私は応援というか、ちょっと協力しているだけであって……」

 ティーゼは、彼の認識にズレがあると思ってそう声を掛けたのだが、クリストファーが「分かってるよ」と優しく目を細め、両手でティーゼの手を包みながら慰めるように撫でてくれたので、伝わっていると理解して胸を撫で下ろした。

 クリストファーは、名残惜しむようにティーゼの手を離すと、視線をそらしながら考えるように顎に手をやり「なるほどね」と小さな声で呟いた。


「――僕も、少し浮かれていたからね。まさかとは思っていたけど、そんなつもりがあって姫との時間を多く作らせていたのか……約束をうやむやにされるのは、我慢ならないな」


 そう独り言を呟いたかと思うと、彼は一つ肯き、微笑を戻してティーゼに向き直った。

「もう少しティーゼと話していたいけれど、少し急ぎの用を思い出したから、先に戻るね」
「列車は一日に一本だけど、大丈夫なの……?」
「心配してくれて、ありがとう。列車なんて必要ないよ。僕は聖剣の力で、ここまで飛んで来たからね」

 そういえば、伝説の剣とかなんとか以前聞いた事はあったけれど……でもそれ、魔法の剣じゃなかったはずでは?
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