英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
 英雄候補――現在は英雄となっている彼には、多くの有名な話がある。


 特に、幼馴染の少女の件に関しては、彼の逆鱗とまでいわれていた。クリストファーの逆鱗に何らかの形で触れたらしい、赤薔薇の騎士団が、当時十七歳だった彼に壊滅させられた話も有名だ。

 彼が、怪我をさせてしまった責任感ばかりで、幼馴染の少女のもとへ通っているだけではないらしい事は、彼と親しい者ならば口を揃えて語る話だった。マーガリーは、滅多に笑わない指導教官から陽気にそれを聞かされた時、なんとなく納得してしまったのだ。

 指導教官が語ったクリストファーは、幼少の頃は持った才能も錆らせるほどの、泣き虫な男の子であった事だった。

 弱かったせいで町の子供達に守られ、怪我一つなく生還を遂げた事で意識が変わった彼は、戦う事への恐れを一切捨て、血を吐くような訓練を進んで受け、行ったのだという。

 彼の外見ばかり見ている女性達は、幼馴染らしい少女について悪い噂を立てた。
< 132 / 218 >

この作品をシェア

pagetop