だって、恋したいもん!
第四話 視線
あ、練習が終わったみたい。
私がいつもこの渡り廊下で聴いているのにはもうひとつ理由があって…
練習が終わった後、彼は必ずこの渡り廊下を渡って帰って行くの。
それを見届けてから私も帰るの。
私は図書委員をしていて部活はやっていない、
いわゆる帰宅部。
図書委員の仕事は週に一度、
図書室で本の貸し出しや返却の受付と本の整理をすること。
これを図書委員全員が日替わりでするのでだいたい週に一度順番が回ってくる。
何かの委員をしていれば部活はやらなくてもいいことになっている。
ちなみに由依は美化委員なので彼女も帰宅部。
だいたい練習が終わって後片付けをしているのだろう、
30分ぐらいすれば彼がここを通る。
話しかけたりするわけじゃないけど、
もちろん私から急にそんなことが出来るわけもない。
ただ姿を見たいと言うだけなの。
私はカバンから小説を取り出して読み始めた。
いつもこの時間を利用して読書をしている。
わりと読書は好きな方。
図書委員をしているのもそれが理由。
そして30分ほどすると彼とそのバンドのメンバーとの話し声が旧校舎の階段の上から聞こえ始めた。
これがいち早く分かるようにといつも私は旧校舎側の端にいるの。
義雄「一曲目にやる曲のさぁ、サビ前のブレイクのところな、いまいち合わねぇよなぁ~」
橋本「あー確かにいまいち合ってねぇ!」
秋元「おぉ、あそこ合ってないとサビの歌の入り込みがずれるな」
斉藤「来週の練習までにちょっと個人個人完璧にしとこうぜ!」
そんな彼らの会話を聞きながら彼が通りすぎる瞬間に視線が彼の方へと自然に向いてしまう。
すると、
彼もこちらを向いて一瞬目が合った!

え、やだ……
と、思わず本に視線を落とした。
胸のドキドキ音が彼に聞こえるんじゃないかと思うほど鼓動が激しくなった。
そんな心配をよそに彼たちは新校舎の階段を降りて行った。
第五話へつづく…