だって、恋したいもん!
第六十九話 泣き虫こおろぎ?
放課後…
私と由依は西野くんたちが練習している旧校舎三階の音楽室の隣の教室へ向かった。
少し由依と話し込んでいたのでもう練習は始まっていた。
軽音の練習の音はかなりの大きさなので学校のどこにいても聞こえるぐらい。
廊下から覗き込むとメンバー五人が演奏していた。
由依「わぁー、近くだとすごい迫力だねー」
理佐「うん、すごい音ー!」
メンバー全員が真剣に演奏していてこちらに気づかない…
みんな制服の上を脱いでTシャツになっていた。
よく見ると同じプリントのTシャツだった…
少し待っていると演奏が終わり西野くんがこちらに気がついた。
義雄「あ、渡邉さん小林さん入りなよ♪」
由依「あ、うん…」
由依「失礼しまーす」
理佐「失礼しまーす」
義雄「こないだ言ってただろ?渡邉さんと小林さん」
メンバー「ちぃーす」
義雄「かっちん!キーボード使える?」
橋本「おぉ、いつでもいけっぞ!」
義雄「渡邉さん、弾いてみてよ」
理佐「あ、うん…」
と、言って準備されていたキーボードの前に立った。

そして練習していたピアノソロのさわりを少し引いてみた。
♪♬♪♬♫♫♩♪♬♪♬♫♫♩~~
メンバー「おぉー!!」
と、男子五人がどよめいた。
私はびっくりして演奏を止めてしまった!
義雄「え?どうしたの?」
理佐「え、ごめんなさい…みんなが…」
義雄「あぁ、ごめん…あまりに上手くてびっくりしたんだよ!」
理佐「え、そんな…」
義雄「なぁみんな!すげぇよなー!」
メンバー「うん、すげぇ上手い!」
橋本「オレより全然上手いよ!」
義雄「かっちんは一応キーボードもやってたんだよ」
理佐「あ、そうなの?」
橋本「あー、でも全然渡邉さんのほうが上手いよ!」
理佐「え…やだぁ…」
義雄「うん、これなら余裕だよ!渡邉さん絶対やってね!」
理佐「あ、うん………私でよければ…」
義雄「オッケー!じゃあ決まりね!次の昼コンは渡邉さんゲストでこの曲は絶対入れような!」
メンバー「おぅ!もちろん!♪」
理佐「いいのかなぁ…私なんかで…」
義雄「いいよ! いいに決まってる! てか、渡邉さんじゃなきゃダメだよ!」
斉藤「よしおー!お前何か個人的な感情入ってないかー?」
義雄「え、あ……いや………そんなことないって!」
斉藤「まぁいいけどなぁー♪」
義雄「お、おぅ……じゃあちょっと休憩しょっかー」
そしてみんなが集まるとやっぱりお揃いのTシャツだったので私は気になって聞いてみた。
理佐「ねぇ西野くん、みんなお揃いのTシャツなの?」
義雄「うん、そうだよ…バンド名が書いてあるのお揃いで作ったんだ♪」
義雄「いつも練習の時は着て来るんだ」
理佐「泣き虫? こおろぎ?…?」
義雄「え?渡邉さん意味わかるの?」
理佐「あ、うん…私、お父さんの仕事の関係で海外に住んでたことあるから…」
義雄「へぇーそうなんだー!すげぇー!!」
義雄「てか、意味わからないような単語にしたんだけどなぁー……」
理佐「あー…うん、そうだね…確かに授業では習わないかも…」
義雄「この『crybaby』てのはエフェクターのメーカーの名前で…」
義雄「これ!このペダル作ってる会社なんだ」
義雄「ギターがね、泣いてるみたいな音が出せるんだよ♪」
理佐「へぇー、そうなんだ」
義雄「で『cricket』は何か生き物でぱっと聞いてもわからないような単語にしたんだけどなぁー…」
義雄「やっぱ帰国子女じゃ敵わないなー」
理佐「え、そんなことないよ」
理佐「でも言い名前だね♪」
理佐「crybaby-cricket」
義雄「わっ!すっげぇー!♪本場の発音じゃん!♪」
理佐「え、そんなぁ…」
と、彼に誉められて少しご満悦になっていた…
第七十話へつづく…