君の心が聞こえる。
───コン、コン。
「恵くーん。出ーておいでー」
こういうところもあるから、わたしは変人と言われるんだろう。
少し声のトーンを上げてそこらへんの可愛い女の子らしく、わたしは彼の名前を呼んだ。
わたしだってバレないように。
途端にぴたりと止んだ中の音。
数秒後にはバタバタと何やら音が聞こえて、それから女の子が慌てたように中から出てきた。
わたしを一瞬だけ睨んだその子は、あっという間に走り去っていく。
早着替えかな。お見事。
「……ねぇ、さすがに常識なさすぎじゃない?」
「ありゃ、わたしだってバレた?」
「こんなことできんの、変人のゆーりセンパイくらいでしょ。呼び方と声変えたって無駄」
中に入ると、机に腰掛けた千堂くんが呆れ顔でわたしを見る。