君の心が聞こえる。
いつもより少し念入りに手入れした髪と、滅多につけない色付きリップ。
今朝ウキウキしていつもと違うことをしたのが彼女には完全にバレていた。
でも、だからこそ、思うことがひとつ。
「メグくんの心の声、いつかは聞こえるようになるのかな」
「……え?」
ずっと考えてはいた。
出会った頃からわたしは、『生きる理由がない』というメグくんのマイナスな声しか聞いたことがない。
楽しいとか、悲しいとか、嬉しいとか、怒りとか。
他の人たちからは当たり前ように聞こえてくる心の声を、メグくんから聞いたことがないんだ。
メグくん本人はまだとぼけるつもりだろうけど、たぶん、林間学校の時から彼は変わろうとしている。
最近のメグくんはよく笑うし、無機質だったガラス玉のような目ももうないと……そう、わたしは思ってるんだけど。
でも、だとしたら。
どうしていまだにメグくんの声は聞こえないんだろうか。
聞こえるようにはなってほしい。
けど。