君の心が聞こえる。
わたしが"普通じゃない"ことは、たぶんもうメグくんにはバレている。
逃げたところでバレてしまったことは変わらないのに、彼と向き合う勇気がないわたしは臆病者だ。
「ねぇ優ちゃん。バラード仮面って、覚えてる?」
「え?」
突然出てきた懐かしいワードに、思わず顔を上げた。
わたしを見ていたさっちゃんが、にこりと笑う。
それは、わたしとさっちゃんが小学生の頃にハマっていたマンガのヒーローの名前だった。
「カッコよかったよね。ヒロインを助けるためにどんな敵とも戦ってさ」
「……さっちゃん?」
卵焼きを口に入れながら始まった彼女の突拍子もない話に、思わず目を丸くする。
なんの話をするかと思ったら……。
そのバラード仮面って確か、ヒロインと同級生の普通の男の子が素性を隠してヒロインを守り続けてたんだっけ。
よくある少女マンガの世界だけど、当時ものすごく大好きだったのだけは覚えてる。