君の心が聞こえる。
怖くないのか、とさっきこの人は言った。気味が悪くないのか、とも。
もちろん驚かなかったと言えば嘘になる。
センパイに出会う前の俺なら、あまりにも非現実的すぎてまず信じすらしなかったかもしれない。
だとしても、だ。
「センパイがセンパイなことには変わりないでしょ」
そんなことで俺があなたを怖がったり気味悪がることなんて、まずありえない。
ましてや、そんなあなたに出会ったから、今の俺がいるというのに。
「……メグくん、変だよ」
ゆーりセンパイはそう言いながら、心底ほっとした顔をした。
さっきまで離してほしそうにしていた手も、今は握り返してくれている。
……そんなに不安がらなくても、俺はあなたのそばにいるのに。
俺があまりにもあっけらかんとした反応をしたからか、センパイはなんだかすっきりしたような表情だった。
ぐちゃぐちゃ絡まって固まった糸がほどけたみたいな、そんな感じ。