君の心が聞こえる。
「……って、あ。肝心なこと聞きそびれちゃった」
そう気付いた時にはもう遅くて。
「ま、明日でもいっか」
隣のベッドに置いてあった荷物を持って、わたしも保健室をあとにした。
***
「市原優里(いちはらゆうり)センパイ、でしょ?」
次の日の昼休み。
千堂くんと話すために例によって保健室に行ったわたしは、何故か既に中で待ち構えていた本人にさっそく名前を言い当てられた。
「え、なんで」
「2年B組。身長150センチのちびっ子」
「なっ、151,2センチあるもん」
「……うわ、噂通りの変人」
しかめっ面になった彼に、わたしもムッとする。
失礼な子。やっぱり生意気。
「で?そんなセンパイが俺になんの用?」
170センチ後半はありそうな大きな後輩くんは、そう言ってわたしを見下ろした。