君の心が聞こえる。
そもそも、あの人のあの察しの良さはなんなんだろうか。
噂の中にもあったっけ。
確か、『考えてること当てられる』とかなんとか。
それ以外にも噂の種類が多すぎて、いちいち事細かには覚えていないけれど。
俺のことを言えないくらい自分も噂立ちまくってんのに、そういえば気に留めもしてないもんな。
「……あ」
「ん?恵どうかした?」
「あー……、ううん。なんでもないよ」
そんなことを考えていると、川釣りエリアの奥の方で、ゆーりセンパイらしき後ろ姿を発見した。
ダークブラウンのボブヘア。うん、間違いない。
周りの人間に見向きもせず、見向きもされず、そしてメインの釣りをすることもなく、川沿いでただ景色をぼーっと眺めて座っている。
……マジで、あの人は何をしているんだろうか。