君の心が聞こえる。


「ま、頑張ろ」

「頑張ってきてね、メグくん」

「……おい」


だからわたしは、まんまとカヌー体験はサボるつもりで行こうと思ってたんだ。



……それなのに。



「市原。今年はサボらせないからな?」

「……先生、なんで知って」

「去年みたいに上手くいくと思うなよ?」


いざ集合場所からこっそり離れようとすると、満面の笑みの担任がわたしを待ち構えていた。


ガシッと腕を捕まえられて、カヌーの前に引きずりだされる。

ライフジャケットも着せられて、全く逃げられるような状況ではなくなってしまった。



く……担任め。


大方、わたしが去年体調不良を口実に山荘に閉じこもっていたことを根に持ってるんだろう。


そのしてやったりの顔は、心の声を聞くまでもない。


「じゃあ、最初乗りたい奴いるかー?できれば女子のがやりやすいんだがな」


集まったクラスメイトに声をかけるも、立候補者が出ることはなかった。


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