高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい


「……離してください」
「じゃあ行く?」
「行きません」
「じゃあ、俺も行かない」
「だから、主役が行かなきゃ意味ないでしょう?」


 何を子供みたいなことを言っているんだと呆れた顔で華は尊臣を見る。


「だから、華も来てくれるよね?」


 じぃーっと見つめられ華は思わずパッと視線を逸らした。男性にずっと見つめられるのは苦手だ。それがたとえ患者さんでも、今だに克服出来ないでいる。ずっと会いたいと思っていた唯一の友達でさえ見つめる事が出来ない。


「華」
「……わかったわよ。行くから名前で呼ばないでください」
「嬉しいな」


 ニコニコと全面に嬉しいを表現できるのはフランクなアメリカからやって来たからに違いない。やっと開放された腕には尊臣の熱が残っている。残っているのに、華の手が震えだすことはなかった。



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