高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい
「はぁ」
とめどなく溜息が溢れ出した。チラッと医局の中を見てみるが三人の男性医師は未だにおしゃべりをしている。
(早くどっかに行ってくれないかしら)
睨みたいわけじゃないのに、どうしても男性のことを睨んでしまう。怖くて。
ふぅ〜と生ぬるく緩い風。耳元に当たる不快感。高校生時代、華は何度も痴漢にあっていた。
思い出しただけでも身体の震えが止まらなくなる。そのせいで大人になった今もどうしても男性が苦手なのだ。最初から男性だと分かっていて対応するのと、突然の接触とじゃ心構えが全く違うからか、怖くて触れられるとつい睨んでしまう。それに高嶺の花と呼ばれた華は男の子と接する機会も元から少なく、どう対応していいのか未だに難しくて分からないのだ。
(唯一私と仲良くしてくれた男の子ももういないし)
華はそっと首から下げているチェーンに触れた。
「尊臣くん……」