高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい
ずっとずっと見たかった華の寝顔がこんな状態の時なんて。
尊臣はずっと握っていた華の手を更に強く握りしめる。点滴に繋がれている華は気を失ってから三十分経っていた。いつもならあっという間に三十分が経ってしまうはずなのに今は一分が、一秒が長い。長くて苦しい。
「華、早く目を覚まして」
気を失っただけで目が覚めるのは自分も医者だ、分かっている。それでも好きな人がこうしてなかなか意識が戻らないと不安で胸が押しつぶされそうになってしまう。
「華」
何度も、何度も華の名前を呼んだ。
「ん……う……」
小さな声が漏れ、華の瞳がゆっくりと開いた。
「華っ! よかった……」
「尊臣くん……あっ、私……あ、あ、あの」
目を覚ました途端、華は何かに怯え始めた。
「華、どうした? 大丈夫か?」
華の手を握ったまま、顔を覗き込む。うるうると揺れる瞳は大きなしずくが流れ落ちそうだ。