高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい

この胸の痛みはなんだろう



 倒れた日、目が冷めた時には尊臣はもう居なかった。自分でも驚いている。あれほど男の人に触れられることが怖いのに、尊臣の手だけは大丈夫だったのだ。怖いどころか安心でき、もっと触れていて欲しい、そう思ってあんな大胆なことを……


(なんで!? どうしたの私っ!?)


 医局の自分のデスクに座っていた華は頭を抱えた。


(やっぱり幼馴染だから大丈夫ってことなのかしら?)


 うぅ〜と悩んでいると「桜庭先生っ!」と呼ばれた。


「はい、どうかしました?」


 いつもの皆がイメージしているクールな華に切り替える。看護師の話を聞きながら廊下を急ぎ歩くと病室から怒鳴り声が聞こえた。

< 26 / 53 >

この作品をシェア

pagetop