高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい


「佐藤さん、どうかしましたか〜?」


 華が病室に入ると更に怒鳴り声は増す。


「だから何度も言っているだろう! 俺は女の医者は嫌なんだ。しかもお前まだ若いだろう? そんな若造に俺の手術を任せられるか! もっと腕のいい医者を連れてこい!」


 病室のベッドに座っている男性が喚き散らしている。


 ――佐藤一郎(さとういちろう)五十代男性、胃がん、ステージ1。胃を温存するため、内視鏡による外科手術を予定。


「佐藤さん。大丈夫ですよ。桜庭先生は何度も内視鏡の手術は経験なさってますから」


 看護師が佐藤をなだめるが頑固じじいと言う言葉がよく似合う外見の佐藤は中身も頑固のようで、看護師の話に聞く耳を持たない。


 華は呆れて、佐藤の近くに寄り口を開いた。

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