高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい

 看護師が医局のドアから顔を出し、尊臣を呼ぶ。


「呼んでるわよ」


 華は自分のパソコンに向かって身体を動かし、尊臣は「今行きます」と看護師に声を掛けた。


「桜庭先生、後で話があるからさ、また後で」


 尊臣はパソコンを見ている華に聞こえるよう身体を屈めて、耳元に囁いた。


(な、なによ……)


 こそばゆい。耳を触るとホッカイロのように熱かった。



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