高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい
閉めておこうと扉に手を伸ばした瞬間、中に人影が見えた。
(えっ……)
思わず身体がピシリと固まる。扉の奥に見えたのは亜香里に抱きつかれている尊臣だ。
「私、高地先生が好きなんです」
「早見さん」
尊臣は抱きつく亜香里を離そうと亜香里の肩に手を置くが、亜香里はめげずに力一杯尊臣に抱きつく。
「先生のためなら私なんだってしますから。好きなんです。私じゃダメですか?」
「早見さん」
尊臣は堅い声で亜香里の名前を呼び、身体を自分から離す。
「ごめん。俺、好きな人がいるって言ってあったよね? だから早見さんの気持ちには応えられないんだ」
「知ってます! それでも、それでも好きなんです。二番目でもいいです。付き合ってくれませんか?」
うるうると瞳を潤ませ、恋に必死な女の子は同性の華にも凄く可愛く見えた。
「早見さん、俺はその人のことしか見てないから、ごめん」
亜香里の瞳からはポロポロと涙が零れ落ちる。