高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい
「私を振ったこと後悔しますからね!」
泣きながら笑った亜香里は小走りで扉へ向かってくる。あ、まずい、と思ったときにはもう遅く、勢いよく出てきた亜香里と肩がぶつかった。
「あっ……えっと……」
なんて言えばいいのかわからず口籠ると亜香里はフンッと華を睨み、小走りで駆けていく。その背中を見つめながら華も歩き出した。
(尊臣くんに好きな人がいるのは私も知ってたけど、あんなに可愛い子を振っちゃうほどその子のことが好きなのね……)
なぜかチクリと胸が痛み、手に持っていたコーヒーの缶を華は両手でぎゅっと握りしめた。冷たいコーヒーは華の手をどんどん冷たくしていく。そのままこの胸の痛みも冷たさで麻痺してしまえばいいのに。