高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい

 これはマズイ展開かもしれない。尊臣に名前を呼ばれても冷静な顔をしていたが内心ものすごく焦っていた。あんな尊臣狙いの女性が集まっている所で自分の名前を呼ばれた時の周りからの視線。まるで注射針でチクチク刺されているかのような痛い視線は今までにも何度か経験したことがある。


 お前、美人だからって調子のんなよ、の視線だ。


 怖い、怖い、怖い。男も女も別の怖さを持っている。華にはそれが経験上よく分かってしまっていた。


 スタスタ、スタスタ。だんだんと歩くスピードが上がっていく。

< 8 / 53 >

この作品をシェア

pagetop