高嶺の花と呼ばれた君を僕の腕の中で包みたい
「華っ、ちょっと待ってよ」
パシンと腕を捕まれ、華の足がピタリと止まった。
「っ! びょ、病院では名前で呼ばないでください」
「あ、悪い。つい昔の癖で。そうだよな、職場だし名字のほうがいいよな」
「腕……離してください」
華は掴まれた腕に視線を向けると尊臣は「ごめん」とすぐに腕を離した。
「日本に戻ってきたばっかりで知り合いもいないし、桜庭先生に色々教えてもらいたくてさ。いい?」
下を向いていた華の顔を覗き込むように尊臣は身体を少し屈めた。華も決して身長は低くないほうだ。百六十五センチあるので女性にしたらまぁまぁ高い方だと思う。それでも尊臣には低いようで覗き込まれた尊臣の瞳は真っ直ぐで艷やかに煌めいて見えた。
「……分かったから。あんまり見ないで」
華は輝く瞳からパッと目を反らす。高嶺の花と呼ばれ続けてしまった華はボッチを極めていたため、人気者の輝いている瞳は華には眩しすぎた。
「は……じゃなくて桜庭さん、今夜なんだけど――」
「高地先生〜〜〜っ」
尊臣の声を遮るように甲高い声が華の背中に突き刺さる。ふと声の方を見ると、外科で看護師をしている早見亜香里(はやみあかり)がパタパタとで小走りでこちらに向かってきていた。ミディアムヘアーを揺らしながら、小柄な亜香里は少し頬を赤く染めている。