溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
1、彼女はとても無防備で



 頬を紅潮させているのは、息が上手くできないから苦しいのだと、以前恥ずかしそうに言っていた。

 口づけで呼吸を乱す姿は、いつも凛として聡明な彼女の印象を見事に崩し、感情を激しく揺さぶった。


「っ、晃汰(こうた)さん……?」


 もう何度も唇は奪っているのに、未だに慣れないのがいじらしい。


「怒って、ますか……?」


 唇を割って少し強引なキスで迫られたからか、千尋(ちひろ)は眉尻を微かに下げどこか困ったように俺を見上げる。

 そんな姿がかわいらしくて、悪戯心が無意識に働いた。


「そうだな、怒っているかもしれない」

「ご、ごめんなさい。突然のことだったので、その、話をするだけならって、晃汰さんに相談もなく──」


 事の経緯を説明する彼女の細い腕を掴み、少し強引に引いていく。

 抵抗することもなく黙ってついてきた彼女を、そのままバスルームの扉を開けて引き入れた。

< 1 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop