溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
捕まえる方法はふたつ。なにか容器を被せて閉じ込めて捕まえる。もしくは、なにかで叩いて駆除するか。
叩くと潰れるから、やっぱり閉じ込めてからなにか殺虫剤でもふりかけるとか?
でも、蜘蛛って駆除しない方がいいとか言わなかったっけ……? 益虫とかいうし、害虫を食べてくれるんだよね?
だったら、このままにしておいても……。
そう思ってみても、私は大の虫嫌い。こんな小さな虫ですら怖いのだ。
虫嫌いになったのは子どもの頃の出来事が原因で、大人になった今も嫌な記憶として残っている。
あれは小学校に入学して初めての夏休みのことだった。
田舎の祖母の家に遊びにいった夜、祖母の家でゴキブリが出た。そしてなんと、そのゴキブリが私目がけて飛んできて、頬にくっついたのだ。
もう二十年近く前の出来事だけど、あの衝撃は未だに忘れられない。
それ以来、どんな虫でも怖くて見るだけでもゾワッとするようになってしまった。完全にトラウマというやつだ。
身動きも取れず、どうしたものかと周囲を見回す。でも、目を離せば姿を見失うかもしれない。
そんなことを思いながら動かない蜘蛛と睨み合っていた時だった。
突然、部屋のドアがコンコンとノックされる。いつの間にか晃汰さんが帰宅していたらしく、「開けるぞ」とドアを開いた。